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宇奈月温泉事件

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タグ: 温泉 富山県

宇奈月温泉の歴史

宇奈月温泉も含め、鐘釣温泉、黒薙温泉、祖母谷温泉などのの温泉があることは、1600年代、江戸時代から知られてはいたようだ。だが、古い温泉地のように湯治場として大々的に利用されるようなことはなかったという。
宇奈月温泉は大正中期以降、黒部川の電源開発によって、工事関係者が利用するようになった大正12年には黒部鉄道株式会社(現在の富山地方鉄道)が宇奈月まで開通し、さらに湯元から温泉の引き込みのための木管が引かれた。
現在、宇奈月温泉旅館協同組合には、宇奈月温泉駅前のフィール宇奈月、貸切露天風呂の宿 ホテル桃源、宇奈月ニューオータニホテル、眺望絶景の宿 延対寺荘、峡谷の絶景露

宇奈月温泉事件

さて、今回の問題である宇奈月温泉事件とはどんな事件なんだろうか。サスペンスドラマのタイトルにでもなりそうだ。十津川警部でも登場してきそうだな、黒部鉄道株式会社(現在の富山地方鉄道)もあるし。
幸い宇奈月温泉事件は、殺人事件ではない。だが、人の貪欲さや利害などがドロドロさ、あるいは法の理想など、様々なことを考えさせられる事件だ。
法学、とくに民法を学ぶ際、必ずと言っていいほど、紹介される事案になっている。それはこの宇奈月温泉事件が、民法典の最初の第1条の3項を適用した日本で最初の事件だからだ。

事案の内容

先に書いたように大正12年に、上流の湯本から木管で温泉をひいてきたのだが、多くの費用を費やし、また地元の期待を背負って、黒部鉄道株式会社(現在の富山地方鉄道)が設けたものだ。開通させた時、1時間まって、やっと水がチョロチョロ・・・。だが数時間すると熱い温泉が届くようになったという。そんな話が語り継がれているくらいだから、この木管と温泉は、黒部鉄道だけはなく、地元の多くの人にとっても重要なものだったんじゃないかと推測される。
木管は7.5Kの長さがある。ところがこの木管、Aさんという人の土地を許可を得ずに通してしまっていた。Aさんの土地は100坪で、そのうち2坪分を通過していたのだという。さてここで、Xが登場する。このことを知ったXは、Aさんから100坪の土地を買いとった。そして隣接しているXの土地3000坪と合わせて、相場の数十倍の値段で、黒部鉄道株式会社(現在の富山地方鉄道)に買いとることを求めた。
Aさんが、100坪を時価で買い取れ・・・という話なら、黒部鉄道株式会社(現在の富山地方鉄道)だって、「長年、勝手に使ってすいませんねAさん」ということになっただろう。今までの利用料も含めて相場よりイロをつけての買取だったかもしれない。あるいは2坪分の土地の利用料をこれからは毎年払うなどといった、普通のレベルのビジネスの話を平和にすることもできただろう。
だが、3100坪を相場の数十倍という要求には、黒部鉄道は応じなかった。そこで、Xは、すでに自分のものになっている所有権のある土地から、木管を撤去するよう裁判を起こした。

判決

さあ、この判決は、どうなるだろうか。
管理人は、放送大学の法学の授業で、この問題を提起された時、これはXの勝ちだと思った。土地の所有権がある以上、木管であろうとなんであろうと、どかせという権利は、所有者のXにあるだろうと思ったのだ。
ところがこれは、一審、二審、そして今の最高裁にあたる大審院でも、Xの訴えを棄却することになった。(大判昭和10年10月5日民集14巻1965頁)
この請求を棄却することになった根拠の法律が、民法の「権利濫用の禁止」だ。
現在の民法典第1条3項には「権利の濫用は、これを許さない」とある。

日本の民法は、フランスとドイツを手本にしている。両国の民法とも、所有権の保護(所有権絶対の原則)を一番の基本として、市民が、自由に取引できる社会を目ざそうとしている。私的自治の原則、契約自由の原則、過失責任の原則などだ。
日本でも継承さ手、自由が尊重され権利が確認される様々な法律があるのだが、何でもやっていい自由ではない。それが民法の一番最初に記されている。
私権は公共の福祉に適合しなければならない。
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
権利の濫用は、これを許さない。

感想は様々かな。
管理人はなかなかすごいと素朴に思った。